[第11回]社会人基礎力から見る人間力⑥


2018.5.21

これまで社会人基礎力の12の要素を一つずつ紹介してきましたが、今回が最終回です。新しい年度が始まり、早や2か月が過ぎようとしています。新しい環境や新しい人との出会いは刺激的と思える一方で、少し慣れてくると今度はストレスに感じる場合もあります。

今回は「ストレスコントロール力」と「規律性」の視点から考えてみたいと思います。

チームで働く力『ストレスコントロール力』

人の性格がバラバラであるように、ストレスを感じるポイントやストレスがかかった時に示す反応は、人によって異なります。例えば、上司に細かくチェックされることをストレスと感じる人と、逆に上司が指導しないことで不安感を募らせる人もいます。

先ずは自分がどのようなときにストレスを感じやすいのか、ストレスをため込むと自分がどのような反応を示すのかなど、自分の傾向を知っておくことが大切になります。壁にぶつかったときに、自分なんて・・・と卑下してしまう自分なのか、自分にしかできない可能性があるはずだと信じれる自分なのか。

「桜梅桃李」という言葉があります。桜はさくら、梅はうめ、桃はもも、李はすもも、それぞれに自分らしさがあり、自分らしい花を咲かせます。比べる必要はないのです。自分のなかでため込まないで、これはという先輩や上司に相談しても良いかも知れません。

人間力講座に登壇いただいた講師は自身の体験を通して「大変な苦労や状況を周りの励ましで乗り越えたからこそ、今の自分がある」と異口同音に語ります。その苦労に比べたら、今の自分の悩みなんて、ちっぽけなものと思えればしめたものです。人間力講座は人間対人間の触発の場であり、苦労こそが人間力を培うと捉えています。

私は、自身の悩みを先輩に相談した時、悠々としているように見えていた先輩も同じ悩みを持っていたことを知り「なんだ、みんな同じなんだ」と思えたら、心の霧が晴れた経験があります。

チームで働く力『規律性』

規律性とは、社会のルールや人との約束を守る力のことを指しています。ルールには、必ずそのルールが作られた理由、つまり意味があります。

ルールを表面的に捉えるのではなく、なぜそのルールが作られたのか?
そのルールを守ることで、どのような効果があるのか?
そのルールに従わないと、どういう影響が出るのか?

ルール存在の意味に対する理解が深まれば、そのルールを応用して、自ら考えて行動することができるはずです。製品設計とも似ています。私が技術者の頃に製品設計を担当して、この回路やソフトは何のために存在しているのかを理解できればしめたものでした。

次に、当たり前のことかも知れませんが「約束を守る」ことは社会人としての基本です。いつも時間通り出社している人が、遅れてくるとみんな心配してくれますが、いつも時間にルーズな人が遅れても、誰も心配してくれません。

松下幸之助氏が新入社員に語った言葉が思い起こされます。「お金が一番大事だと思ったらあかんぞ。お金は失っても取り戻せる。けれども、人生にはいったんなくしてしまうと取り戻せんものがあるんや。あるいは、取り戻すのに大変苦労するものがある。それは信用や」(出典:上甲晃著『志を教える』)

この著書は、私が人材開発の責任者であった当時の新入社員研修の課題図書にも指定させてもらいました。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2018年5月時点のものです。


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