[第14回]働き方改革を実践した先輩の人間力


2018.8.20

先日、東芝に入社してからをふり返る機会があり、良き人との出会いがあればこそ、これまでやってこられたと、出会った一人ひとりへの感謝の思いを深くした。
今回は、私が会社で出会った先輩を通して、人間的な魅力を考えてみたい。その先輩に出会っていなければ、今の自分はないだろうと感じている。やはり、人間力を磨くためには、刺激を与えてくれる目の前の一人から、素直に学べるかどうかにかかっているのではないだろうか。

先輩との出会い

その先輩は、入社した頃に出会ったN課長である。

N課長は「真野君、ちょっと」と呼ぶと、メモ用紙を取り出し、すらすらとポンチ絵を書き始める。「こんなことできないか」「こんなことができたら面白いな」と話しかけてくれる。
私も好奇心旺盛で「それは面白いですね。考えてみます」と応える。課長から預かったメモは何枚にも及ぶ。職場を離れ、家に帰ってからも何か良いアイデアはないだろうかと、考えを巡らすことも多かった。そのアイデアを盛り込んだ製品がいくつも世の中に出ている。

N課長に倣って「アイデアノート」を作成した。思いついたときに、思いついたことをメモした。このノートは新製品の開発や特許を書くときに大いに役立ち、そのメモから生まれた特許は数多い。

N課長は、自分に刺激を与えてくれる存在だった。今でも覚えているその言葉は「仕事はゲームだ。相手と話すときには、何手先まで読むかだ」「目の前の仕事にだけ没頭してはいけない。遊び心を常に持て。常に先の先のことを考え、そのために備え、自信を磨く時間を作れ。そうでないと先々は、使いものにならなくなるぞ」など、私の仕事スタイルを決めてくれた。

わくわく感のある仕事

N課長と話しているとわくわくしてくる。その頃、自分が描いていた「仕事は大変なもの、辛いもの」との思いを「わくわく感」へ変えてくれた。現在に至っても、わくわく感のある仕事をしたいとの思いは変わらない。

その先輩は、古希を迎えた今も現役である。自宅には、手作りのリスニングルームがあり、自作のアンプやスピーカーが並んでいる。訪問するたびに、心に響く、素敵な音色を聞かせてもらっている。前回訪問した時にも、自作の回路図をもとに、半田ごてを使って、製作中であった。その創作力と意欲は衰えることを知らないようだ。

話していると、思わず30年前に職場で話をしているようだった。
「人は立場によって、その立場を弁えて、自身を変化させていかねばならない。それができないようでは失格だ」
「私もマネジメント職になった時にはマネジメントに力を注いだ。その時は、大好きな設計の仕事は、家で趣味としてやってきた」
マネジメントの心得や役割など大事な観点を突いていると、思わず唸ってしまった。

続けて、「設計開発で、頭を一所懸命使うとへとへとになる。とても、残業できる余力は残らなかった」と。今にして思えば、働き方改革を自ら実践されていた。ここでも、残業するのが当たり前との仕事観を打ち破ってくれた。

私が設計の仕事を離れ、人材開発の仕事をしていること、人材開発で出会った人が財産になっていることなどを話すと「真野君が、設計開発の仕事から、人材開発の仕事へ異動して、良かったと思えていることは、その立場を自覚して、自身を変化させてきたからだと思う」と励ましの言葉もいただいた。

先輩の人間的な魅力は衰えず、「先輩のおかげで、仕事を続けてこられました」と、感謝の思いを伝えて、先輩の家を後にした。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
インダストリアルソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2018年8月時点のものです。


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