[第34回]環境の変化を刺激に変えて


2020.4.20

採用や人材開発の仕事に従事して一番わくわくするのは、新入社員を迎えたときではないでしょうか。スーツ姿で緊張した笑顔を見ると、こちらまで新鮮な気持ちになります。若さこそ最高の財産との思いで、新たな出会いに「頑張れ!」とエールを送りたい。今回は新年度を迎え、環境の変化へいかに立ち向かっていくのかについて考えてみたいと思います。

環境の変化を恐れない

人間力講座に登壇いただいたホンダF1チーム総監督を務めた桜井淑敏氏は著書の中で「みなさん、不安の反対語はなんだと思いますか?恐らく皆さんは、安定とか安心といった言葉を思い浮かべているのではないでしょうか。でも僕はそうは思いません。安定とか安心には、それ自体、それをまた失うかもしれないという不安がつきまとうものだからです。僕は、不安の反対語は『挑戦』だと思います」(桜井淑敏著『海のように 風のように』)と語っている。

変化に立ち向かうとき後押ししてくれる言葉だ。新たに社会人となった人はもちろん、人生の先輩方も含めて皆さんへ送りたい。一つの会社に長年勤めてくると、安定や安心という言葉が浮かんでくる。その日その日に流されることなく、自分の中にある種火をかきたて、燃え上がらせる応戦の日々でありたい。

最近、私のことをよく知る先輩から「まだ東芝にいるの?」と聞かれることがあった。一つの会社に長年勤めキャリアアップしていく生き方に加え、転職して斜めにキャリアアップしていく中で、自身の可能性を開いていく生き方もある。私の場合、幸いにも(今だから言えるのかも知れないが)同じ会社の中で、輸出向け通信機器の設計開発部門、人材開発部門、そして現部門への異動を通して、一つの会社でもこんなにも違う仕事があるのかと思えるような仕事に巡り合うことができた。転職経験はないので、多くは語れないが、違う環境に身を置くことはストレスが多い一方で、刺激は多く一皮むけるチャンスだということだけは言えそうだ。

畑違いの職場へ異動した人へ送りたい。松下政経塾 元塾頭 上甲晃氏が、松下電器(当時)から松下政経塾への出向の話を断る件は印象的だ。上甲氏が「私のような政治の素人に松下政経塾の仕事は無理です」と言うと松下幸之助氏はこのように答えたそうです。「そうか君、素人か、そらええな。人間、誰でも最初は素人や」と。(上甲晃著『人生に無駄な経験などひとつもない』)

素人には、素人にしかない良さがある、と気づかせてくれる。

働き方の変化を刺激へ変えて

新型コロナウィルスへの応戦で、同じ職場にいても、働き方は大きく変わろうとしている。在宅勤務等のテレワーク導入へ向け、さまざまなコミュニケーションツール等のハード面は先行しているが、社員の働き方の意識改革や管理職のマネジメントスキル向上などソフト面でのサポートは疎かになっていないだろうか。そもそも従来の働き方とテレワークでの働き方には違いはあるのでしょうか?皆さんはどのように感じていますか?テレワークでもこれまで以上に成果を出したい。テレワークでも自立・自律して働く社員を育てたい、等々。

最近お会いした教育関係者の方から興味深い話を伺った。テレワークを理由にコミュニケーションの質や情報量低下を訴求することは、本筋ではないとのご意見をいただいた。もともと、潜んでいた課題やマネジメント手法の脆さが顕在化しやすい状況になっただけで、その本質に立ち戻って、見直さない限り、小手先のやり方に過ぎないというわけだ。

思わず前のめりになり、聞き耳を立てた。自身の仕事スタイルをふり返り、自分の働き方を見直すための刺激をいただいた。

話は横道にそれるかも知れないが「刺激を与える」「関心を持たせる」「学ぶきかっけ作り」などの動機付けこそ、人材育成の軸足ではないだろうか。あくまでも刺激を与えるだけで、実際に学びを深める作業は人任せではいけない。本人が苦労した分だけしか残らない。だから、人に教えることが一番身につくのだろう。人材育成の本質を考える時間となった。

働く環境の変化を刺激と捉え、自分の仕事スタイルを見直してみませんか。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ICTソリューション事業部 HRMソリューション部
真野 広

※記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年3月時点のものです。


関連サイト