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お客さまインタビュー

属人化からの脱却
全社共通のBCP管理基盤により災害対策に貢献する
戦略調達ソリューション「Meister SRM™」

カンパニー:セイコーエプソン株式会社 × ソリューション:戦略調達ソリューション「Meister SRM™」

 プリンターなどのプリンティングソリューションズ事業を中心に、革新的な製品・サービスを市場に展開し続けているセイコーエプソン株式会社。世界中でビジネスを展開している同社では、有事に備えた事業継続のためのBCP管理を徹底して行っており、サプライチェーン全体の情報を迅速かつ的確に把握する仕組みを構築している。そのBCP管理の全社共通基盤に採用されたのが、東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)が提供する戦略調達ソリューション「Meister SRM™」だ。

サプライチェーンに関する有事の際の初動調査を含めた事業継続マネジメントは事業ごとに個別に行われていたが、災害発生時などに経営層への第一報までに時間を要するケースがあった。また、BCP管理の方法が属人化されており、担当者変更などがあると管理体制の継続が難しくなる可能性もあった。

戦略調達ソリューション「Meister SRM」によってサプライチェーン情報を一元管理し、全社共通のBCP管理基盤を整備することで、有事の際に必要な初動対応の迅速化や継続的なBCP管理を実現。さらに、Meister SRMの活用範囲を拡張することで、サプライヤーとの情報共有基盤を整備することができた。

導入の背景

サプライチェーンをグローバルな規模へ拡大

製品集合

 ウオッチの開発・製造で磨き上げた超微細・精密加工技術、省エネ技術など、創業以来培ってきたエプソンのDNAである「省・小・精の技術」を武器に、「世の中になくてはならない会社」の実現に向け、創造と挑戦を重ねているセイコーエプソン株式会社。ホーム向け・オフィス向けプリンターなどのプリンティングソリューションズ事業をはじめ、プロジェクターやスマートグラスを手掛けるビジュアルコミュニケーション事業、ウオッチや健康・スポーツ用のウエアラブル機器を扱うウエアラブル機器事業、スカラロボットなど産業用ロボットを手掛けるロボティクスソリューションズ事業、半導体や水晶デバイスなどを手掛けるマイクロデバイス事業など、その事業領域は多岐にわたり、顧客や市場のニーズに適したさまざまな製品を提供している。

 より良い社会づくりに貢献すべくCSR活動にも積極的に取り組んでおり、2017年にISO26000などで定められた社会課題を参考に、環境活動や人権尊重、人材育成、ガバナンスなどを幅広く含んだ29項目におよぶ「CSR重要テーマ(マテリアリティ)」を策定。国連サミットにて採択された「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」にも照らし合わせながら、社会課題の解決に真摯に向き合うことで持続可能な社会の実現を目指し、環境にやさしいものづくりを推進している。

 同社は、1968年に初めて海外生産拠点をシンガポールに設立して以来、グローバルでビジネスを展開しており、今ではアメリカや中国、オランダ、シンガポールに各地域統括を設置し、およそ60の国と地域に生産・販売拠点を広げている。そのため、サプライヤーから原材料や部品を調達し、海外での生産活動や在庫管理、販売、配送までを含めたサプライチェーンは全世界規模にまで拡大している状況だ。だからこそ、地震などの自然災害や有事の際には、その情報を迅速に収集した上でサプライチェーンへの影響度合いを即座に把握する仕組みが、事業を継続するためには重要なものになってくる。

導入の経緯

BCP管理の全社共通基盤化を目指す

小松 聖次氏

生産企画本部
生産企画部 部長

小松 聖次氏

 「事業継続マネジメントについては、事業ごとに個別に判断してBCP管理が行われてきた」と生産企画本部 生産企画部 部長 小松 聖次氏は説明する。「有事の際には、サプライチェーン全体から正しい情報を迅速に収集し、その情報に基づいて正しい判断を経営層に仰ぎ、速やかなアクションをとることが初動対応として重要です。そのための仕組みは各事業にて運用されていましたが、事業ごとにばらつきがあり、情報そのものが一元管理が困難であったために、有事の際に情報を整理して経営層へ報告するまでに時間がかかるケースもあったのです」。その課題が浮き彫りになったのが、2011年に発生した東日本大震災や同年にタイで発生した洪水被害だった。「被災状況を把握するために必要に迫られ場当たり的に現場に連絡するなど、何とか情報を集めようと必死でした。その際の非常に苦労した経験があり、BCPの活動を改善する必要性を痛感したのです」と同部 課長 手塚 清氏は当時を振り返る。

 しかも、BCP管理の方法は属人化されている部分が多く、サプライヤー側の担当者や社内の調達担当者が異動してしまうと管理の継続が難しくなるというリスクも顕在化していた。「BCP対応はもはや一過性の活動ではありません。管理の継続性を担保するためにも、全社の共通基盤としての仕組みを構築したかったのです」と小松氏は力説する。事業ごとにシステムが運用されているため、全社での業務効率の改善も求められていたのだ。

導入のポイント

サプライチェーン全体の情報収集が柔軟に行える点を評価

手塚 清氏

生産企画本部
生産企画部 課長

手塚 清氏

 「災害は私たちの対応を待ってくれません。だからこそ、可能な限り迅速に導入できる仕組みとして外部パッケージの利用を選択したのです」と手塚氏。なかでも求められたのは、サプライヤーと情報を円滑にやり取りできる仕組みだった。もちろん、初動での影響確認や個別の追調査が可能なこと、全社共通で確立されたプロセスが実装できることは必須となった。「私たち生産企画部以外にも、サプライヤーに対して定期的に調査を依頼するケースがあります。そのため、サプライヤーとのコミュニケーション基盤を共通化し、要件に応じて柔軟に拡張できる仕組みを作るべきだと考えたのです」と同部 課長 望月 剛氏は語る。

 そこで注目したのが、東芝が提供する戦略調達ソリューション「Meister SRM」だった。「当初はできる限りシンプルなものを検討しましたが、データの精度を高めるためにはある程度情報量が必要になります。サプライチェーン全体の情報がしっかり網羅できる点を高く評価しました。また短期間での立ち上げを想定しており、クラウドサービスとして利用できる点も私たちには最適だったのです」と手塚氏。また、事業軸で必要な情報を切り出して活用できるだけでなく、情報を柔軟に追加できる仕組みであることも評価したという。さらに、電子見積りを含めた豊富な機能が備わっているMeister SRMだが、優先課題であったBCP管理の機能だけを切り出して導入し、その他の機能を段階的に導入できる点も好評だったという。

 使い勝手の面では、災害による生産拠点への影響度合いなど、サプライヤーに対して調査依頼を行う初動対応機能を高く評価。「例えば激甚災害などが発生した場合、杓子定規に調査依頼のメールを送るのではなく、状況によっては数日後にお願いするということも必要です。そういった柔軟な対応ができる仕組みだったことも大きいです」と手塚氏。初動調査の依頼後に連絡がないケースにも対応できるフォローメールの自動配信機能をはじめ、サプライヤーへの依頼時に災害の状況に応じてお悔やみやお見舞いの文言を挿入することができるなど、状況に適した柔軟性を持っている点が評価された。

望月 剛氏

生産企画本部
生産企画部 課長

望月 剛氏

 望月氏は、東芝本体の調達部門がMeister SRMを活用している点にも注目したという。「私たちと同じような仕事をしている東芝の調達部門の経験も踏まえながら、実際の運用まで含めた提案をしていただいたことも高く評価したポイントです」。例えば、初動の調査はボタンだけでシンプルに回答でき、必要に応じて個別に追調査できるという二段階での調査手法が実装されているなど、実際の運用にも適しており、好評である。サプライヤー情報の管理については、同社にて一括登録し、運用後は定期的にサプライヤー側にメンテナンスを依頼したり、説明会にて入力を促したりすることで、最新の情報が反映できるようになっている。

 こうして、同社のニーズに合致したMeister SRMが選定され、BCP管理の全社共通基盤として採用されることになった。

導入の効果

スピーディな初動調査で経営層への報告、全容把握の迅速化に大きく貢献

 Meister SRMを導入したことで、サプライチェーンへの影響調査から経営層への報告まで、災害時の初動調査の迅速化が図れるようになったという。「2018年9月に発生した北海道胆振東部地震の際には、午前中のうちにサプライヤーに対して調査依頼を行い、当日の夕方までには経営層へ報告することができました。初動調査のスピードが大幅に向上しています」と小松氏。また、手塚氏は「以前の実績では、サプライチェーン全体の被災状況の全容を把握するのに1カ月程度かかってしまったこともありましたが、今回の北海道地震では初動で24時間以内、追調査も含めて1週間程度で全容把握ができました。短い期間で把握できるようになったのは大きな効果です」と評価する。

 当初はBCP管理を中心にMeister SRMを利用していたが、今では既存の電子見積りの仕組みをMeister SRMが持つ電子見積りの機能に切り替え、一部の事業から運用が始まっている。「複数のベンダーを検討するなかで、機能要件やサポート面で評価されたMeister SRMの電子見積機能が採用されました。この機能については、私たち生産企画部から全社へ水平展開していく計画です」と手塚氏は語る。「これまでは事業ごとに個別に調査依頼などをお願いしていましたが、今は共通基盤のなかでサプライヤーに回答いただけます。サプライヤーへのストレス軽減にもつながっているようです」と望月氏は評価する。

 Meister SRMの導入によりBCP管理や見積業務などのコミュニケーション基盤を整備したことで、属人化した業務が一元化され、共通のルールの下で情報を管理できるようになり、業務の効率化にも大きく貢献している。「災害時の状況把握がスムーズになっただけでなく、見積業務についても情報が一元管理され、過去の情報も共有しやすくなりました。業務の効率化にもつながっているのは間違いありません」と手塚氏。高負荷のメンバーの仕事をほかのメンバーに振り分けることで業務負担の軽減に役立つなど、働き方改革の一環としても効果を発揮していると評価する。

 また、「サプライヤー情報を高頻度に更新でき、データの精度を保てるようになったのは副次的な効果として大きい」と小松氏は評価する。サプライヤー側には、自社が抱える取引先管理の基盤として有効活用してもらえるよう努めている状況だ。

将来の展望

サプライチェーン情報のさらなる充実を図る

集合写真

プロジェクトメンバーの皆様

 今後については、現在国内を中心に展開しているMeister SRMを海外の現地法人などにも展開したうえで、機能をさらに拡張していく計画だ。同時に、Meister SRMが持っているアンケート機能などを活用しながら、引き続きサプライチェーン情報を充実させる活動を継続していくという。

 さらに、国内外の一定規模の災害情報を自動で取り込むことでバイヤーに通知する「災害情報連携オプション」を利用し、日本で発生している災害情報だけでなく、海外の地震や水害、爆発事故などサプライチェーンに影響しそうな災害情報の自動登録をトライアルとして行っていくという。「私たちの範囲だけでは収集できる情報には限界があるため、外部機関の情報も有効活用しながらBCP発動の知見を蓄えていきたい。いずれは収集した情報をもとに初動調査の判断が自動化できるような環境づくりにも取り組みたい」と小松氏は語る。

 いつ発生するか予測のつかない災害。これからも東芝のソリューションが同社のサプライチェーン全体の災害対策において支えとなっていく。

SOLTION FOCUS

戦略調達ソリューション「Meister SRM」

サプライヤーとの接点プロセス全体にわたるコミュニケーション基盤による戦略調達の実現。多くの製造業はグローバル市場で勝ち抜くために、戦略的な調達イノベーションに取り組んでいます。日々収集される部材コストや取引先などのサプライヤー情報などを一元管理して有効に活用し、調達コスト、遵法リスク、生産活動中断リスクを低減するサプライヤーコミュニケーション基盤。サプライチェーンを構成する生産拠点の位置情報を得て迅速に影響を把握できます。

この記事の内容は2018年12月に取材した内容を元に構成しています。
記事内における数値データ、組織名、役職などは取材時のものです。

COMPANY PROFILE

会社名
セイコーエプソン株式会社
創立
1942年5月
代表者
代表取締役社長 碓井 稔
本社所在地
長野県諏訪市大和3-3-5
事業概要
プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業、ウエアラブル機器事業、ロボティクスソリューションズ事業、マイクロデバイス事業、その他事業 (金属粉末、表面処理加工)
URL
https://www.epson.jp/ 別ウィンドウで開きます

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