東芝デジタルソリューションズ株式会社

東芝の結集力でお客さまとビジネスを共創する

IoT技術をベースに新しい価値づくりと「モノ+こと」ビジネスの共創を加速

ICT利活用の目的は、商品やビジネスの価値向上、新たなビジネスの創造へと向かっています。 今、東芝グループはICTを活用したイノベーションによる事業構造改革や新規サービスビジネスへ のシフトを進めており、そのカギを握るのが今後の成長が期待されているIoT(※1)市場です。 東芝の東芝デジタルソリューションズ株式会社(以下、当社)はIoT分野にフォーカスするために、 社内カンパニーおよびグループ会社(以下、事業部門)と協力しながら、「モノ+こと」ビジネスの創出にチャレンジしています。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
IoT事業開発室 室長

沖谷 宜保 - Noriyasu Okitani -

1985年入社。鉄鋼や通信事業者向けの計算機システム開発、社会インフラ向けの計算機システム
開発を経て、現在はIoT/IoEによるサービスビジネス事業開発を推進。

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製品販売中心のモデルからサービスを重視したモデルへ

 世界の産業は、製品やサービスを単純に組み合わせて販売するだけでなく、クラウドやビッグデータを活用して、さまざまな付加価値を提供するビジネスモデルへと進んでいます。東芝グループもこうした潮流をとらえ、多様なサービスビジネスモデルの創出に取り組んでいます。
 そして、その先にあるものとして、お客さまへの提供価値に基づくパフォーマンスベースのサービスモデルなど、全く新しい価値とビジネスモデルの創造を目指しています。これらを実現する上で、ICTとりわけIoT技術(※1)は重要なカギを握っています。新しいサービスモデルを構築する上で、センシングを通じたモノの状態把握や制御、人の行動や意図の理解は極めて重要です。
 お客さまは単にモノを所有したいわけではありません。モノを通じて何らかの課題解決、あるいは新しい価値の実現を望んでいるはずです。こうしたニーズに応えるためには、自前の技術や製品だけにとらわれるのではなく、お客さまニーズに応じた外部のリソースも組み合わせて提供することが必要となります。そして、お客さまには“ONE Toshiba”としてワンストップで製品、サービスをご利用いただけることが重要と考えています。

サービス創出と基盤構築で新しい価値づくりを支える

図1 東芝グループの力を結集(Toshiba IoT Architecture)

 ONE Toshibaとしての結集力を一層発揮するため、当社は2015年4月に組織体制を見直し、事業部門と連携したサービス創出と基盤構築を行っています。
 前者の柱になるのが、東芝グループの事業部門およびお客さまへのコンサル人財支援によるサービスの共創です。 それぞれの事業部門は、お客さまのビジネス現場を深く理解しています。さまざまな産業分野における知見や経験は東芝グループの強みであり、これらをデータモデルの構築に反映したIoT技術で新たな価値の実現を目指します。
 さらにもう一歩踏み込んで、その先のお客さまへも人財を派遣して「お客さまのお客さま」(多くの場合は、エンドユーザー)に訴える価値づくりにも取り組んでいます。
 当社のお客さまを例にすると、世界中のさまざまなプラントに提供しているプロセス関連製品の設置や稼働状況をインターネットを利用して遠隔監視しています。このデータに基づいて、設備の安定稼働やタイムリーな保全サービスをお客さまと当社とで一緒に行っています(※2)。
 IoTを活用してエネルギーなどの社会インフラ、ヘルスケア、流通、製造などさまざまな産業分野でサービスを創出する。それは、当社の新たなビジョンです。
 IoTサービスは、いくつかの階層によって実現されます(図1)。 最下層で支えるのは「モノ」。それは、エンドポイントに設置される機器類です。その上の層が、データを収集・蓄積・分析する「IoT基盤」です。そして、契約管理や課金などの機能を持つ「サービス基盤」。 最上層にあるのは「こと」で、具体的なサービスです。このサービスを生み出すために、お客さまや東芝グループの各事業部門との密接な協力関係を築いていきます。

多様なサービスを支えるIoT基盤を共用する

 IoTサービスに必要な基盤構築とは、先に触れたIoT基盤とサービス基盤を整備・構築することです。これらの機能を縦割りで個々のサービスごとに用意すれば、最適なものができるはずですが、構築に要する時間と、都度構築することによるコスト高により、お客さまには受け入れてもらえません。
 そこで重要になるのが、多様なサービスに柔軟に対応できる基盤です。まずIoT基盤は、幅広い製品・設備など(以下デバイス)をクラウドに接続し、運転データ・稼働情報・故障情報などを収集・分析・制御できる機能をクラウドで提供します。現場(デバイス側)に設置するネットワークゲートウェイやデバイスに組み込むプロセッサチップApPLite(※3)ではエージェントソフトウェアを動作させて、クラウド側の処理に応じたデータの収集や処理を行います(エッジコンピューティング)。クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの協調分散処理によって、リアルタイム性やロバスト(堅牢)性を重視する社会インフラなどへの用途にも耐えられる基盤となります。また、グローバルベンダーとのアライアンスを進めて業界標準でオープンな基盤として提供します。
 次にサービス基盤はサービスビジネスを支えるもので、利用期間や使用量に応じた課金・決済(例えば使用量課金(Pay per Use)やプリペイ(Pre Pay)、デマンドレスポンスの結果課金(Pay per Result))などの新しい料金体系にも対応し、顧客の獲得や維持のためのCRM(※4)、顧客との契約・サービス品質保証(SLA)(※5)の管理、顧客サイトに設置される製品・設備のアセット管理など、さまざまなビジネスで共通で利用できるサービス機能を提供します。
 東芝グループは長年にわたり、さまざまな施設やインフラなどに多様な機器を提供してきました。こうしたモノづくりを通じて獲得した豊富な現場の知識を、現場に位置するデバイス、そのセンシングやデータ収集・分析・制御などのノウハウとして結晶化し、最適なIoT基盤として整理、体系化。これを東芝グループで共有することで、新たなIoTサービスのお客さまとの共創を加速します。

リーンスタートアップでビジネス化を加速

 こと、サービス基盤、IoT基盤、モノの四つの階層からなるプラットフォーム(Toshiba IoT Architecture)を構築する上で、一つのポイントが自前と外部リソースとのベストミックスです。
 例えば、サービス基盤のカバーするエリアは非常に広く、必要な要素を自前で用意するには相当の時間がかかります。決済代行やリースといった特定のサービスに強みを持つ企業との協業は重要な選択肢です。外部サービスをきちんと評価した上で、全体のアーキテクチャーの中に整合的に取り込む必要があります。
沖谷 宜保
 IoT基盤の一角を占めるクラウド基盤についても、同じことがいえます。世界を見渡すと、クラウド分野で存在感を持つサービスがいくつかあります。その中から適切なサービスを選択するのも一つの方法だと考えています。ただ、ミッションクリティカルな分野では、東芝の持つ高品質なクラウド基盤が最適と判断されるケースも多いと考えています。
 東芝グループは社会インフラやヘルスケアなど、ミッションクリティカルな事業分野を多く手掛けています。こうしたエリアでも活用できるプラットフォームのキーワードは、「リアルタイム」「ロバスト」「スケーラビリティー」の三つです。こうした要件を満たす基盤づくりを進める一方で、例えば「堅牢性よりも、低コストを優先する」分野では、それに適した外部サービスを活用する。こうしたアプローチにより、幅広いお客さまの多様なサービスに対応していく考えです。
 以上のようなプラットフォームにおいて、お客さまと共に新しいサービスを生み出していく。そのために、当社は新しい開発手法の導入を進めています。
 従来は、個別案件ごとに時間をかけてお客さまの要望をヒアリングしてシステムに落とし込むという手法が一般的でした。これに対して、最近はリーンスタートアップと呼ばれるスピード重視のアプリケーション開発が注目されています。
 お客さまと共にビジョンを共有し実現のための課題を抽出した後、まずは必要最小限のサービス機能を開発してリリースする。その上でユーザーの評価や計測した効果をフィードバックしながら、機能を修正・追加して再評価をするサイクルを繰り返してサービスの完成度を高めていく。このようなリーンスタートアップにより、市場投入と改善のスピードアップが可能になります。

音声・画像を認識して「人を想うIoE」へ

図2 IoTから「人を思うIoE」へ

 IoTの活用は幅広い産業分野、社会に対して大きなインパクトをもたらします。
 ゼネラルエレクトリック社(GE)のインダストリアル・インターネットやドイツのインダストリー4.0(Industrie4.0)などは、IoTをフルに活用する概念です。
 IoTの役割には大きく二つの側面があります。モノの品質向上に加えてモノの使用価値(顧客経験価値)を高める点と、モノをつくるプロセスの最適化による効率改善などです。この両面において製造業である東芝はいろいろなノウハウや強みが生かせると考えています。
 また、モノに関わるデータと人の言動に関するデータを組み合わせれば、より高度なサービスが可能になると考えています(図2)。例えば、音声や画像を認識したボーダーレス、バリアフリーでのコミュニケーション、医療や介護の現場での作業支援、車や機械の運転支援などは実用レベルに近づいています。当社では多言語認識や機械翻訳、画像認識などの研究開発と応用システムの開発に早い時期から取り組んできました。
 モノに触れたり使ったりするのは人です。人にはモノと違って感情や意図があります。人の音声や画像を知識処理して活用する当社のメディアインテリジェンス技術によってそれらを汲み取ることが可能になります。
そして、人・モノすべてをつなぐ当社の「人を想うIoE(※6)」を、安心・安全で快適な社会を目指す“Human Smart Community”の実現に大いに役立てたいと考えています。

※1 IoT:Internet of Things(モノのインターネット)

※2 詳しくは、『T-SOUL』Vol.13(東芝デジタルソリューションズ株式会社のウエブサイト)で紹介しています

※3 ApPLite:東芝製ICアプリケーションプロセッサ

※4 CRM:Customer Relationship Management(顧客関係管理)

※5 SLA:Service Level Agreement

※6 IoE:Internet of Everything

※本内容は東芝デジタルソリューションズ株式会社グループの情報誌「T-SOUL15号」の特集から転載しています。
※本記事に関する社名、部署名、役職名などは2015年7月現在のものです。
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