東芝デジタルソリューションズ株式会社

ソフトウェア技術力を「こと」づくりに生かす

プラットフォームとプロセスを支えるソフトウェア技術に磨きをかける

「モノ+こと」ビジネスにおいて、ソフトウェアの役割は極めて重要です。ソフトウェア技術を高めながら、共通プラットフォームとプロセスを確立することが、東芝グループの新しい「モノ+こと」サービスにつながります。デバイスからサービスまで長年の経験で培われたソフトウェア技術の強みを生かし、私たちはIoT時代に求められる新たなソフトウェア技術の開発を進めています。IoTサービスの海外展開が期待される中で、インドやベトナムなど海外ソフトウェア開発拠点も強化しています。

東芝デジタルソリューションズ株式会社
ソフトウェア技師長

天野 隆 - Takashi Amano -

1991年入社。モバイル機器やPCのハードウェア・ソフトウェア開発、コンシューマー向けクラウド
サービス開発を経て、現在はIoT/IoE向けソフトウェア技術開発を推進。IIC(Industrial
Internet Consortium)東芝代表。

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プラットフォームとプロセスの共通化を推進

図1 プロセス・品質技術

 東芝グループが推進する「モノ+こと」ビジネスにおいて、ソフトウェア技術は不可欠の要素です。東芝独自のIoT(※1)サービスを生み出す、あるいはお客さまとの共創を通じて新たなIoTサービスを実現するのにカギを握るのが、高度なソフトウェア技術に裏打ちされたプラットフォームとプロセスです。
 プラットフォームとは、「モノ+こと」ビジネスを支える基盤です。このプラットフォームは、「こと」「サービス基盤」「IoT基盤」「モノ」という四つの階層で構成されます(参照)。
 一方のプロセスは、「モノ+こと」ビジネスを創出するための方法論やファシリテーション手法などを意味します。私たちはこの両面で共通化を進めながら、必要とされるソフトウェア技術の一層のレベルアップや競争力の向上を目指しています。
 IoTサービスを実現する上では、お客さまの経営課題を具体化していくためのファシリテーション手法やそのツールのほかに、アジャイル開発のように効率的なソフトウェア開発を実現するための、ソフトウェア開発プロセス技術が重要になってきます。要求分析から設計、実装、テストに至るアジャイル開発プロセス全体をサポートし、 適切に管理するための技術を紹介します(図1)。

アジャイル開発の質と効率を高めるソフトウェア開発プロセス技術

 まず、要求分析フェーズ。お客さまからの要求は、必ずしも整然としたものばかりではありません。曖昧だったり、抜けがあったり。一見しただけでは分かりにくい、矛盾する要素が同居していることもあります。
 要求仕様化技術を用いてこうした問題点を早い段階で検出し排除することで、開発の質と効率を向上できます。この技術は仕様変更の管理などにも用いられます。
 これと似た技術の形式手法も重要です。数理的技法や計算機による網羅的探索技法などを用いて、矛盾や抜けなどを早い段階で排除します。
 次の設計フェーズでは、幅広い製品シリーズを前提に、製品ごとに縦割りで開発を行うのではなく、共通のソフトウェアプラットフォームを活用してシリーズ全体を効率よく開発するためのプロダクトライン構築技術と、C言語などの汎用プログラミング言語よりも抽象度の高い形で設計を行うモデルベース設計技術が、アジャイル開発にはより重要になってきます。UML(※2)などのモデル記述言語を用いて、お客さまからの要求と齟齬(そご)がないように確認しながら設計を進めます。抽象度を上げて設計することで、本質が見えてくることもあります。
 実装フェーズでは、ソフトウェア設計の質を定量的に評価するソフトウェア構造診断技術や、開発プロセス全体を支えるツール群またはツールチェーンである開発インフラ構築技術が重要になってきます。このように、これまでに培ったソフトウェアプロセス・品質技術が、アジャイル開発を支えています。

先端ソフトウェア技術とメディアインテリジェンス技術

図2 データを確実に格納するデータベース技術

 プロセス技術とは別の観点で、東芝グループは先端ソフトウェア技術の開発にも注力しています。例えば組み込み技術では、Linuxなど汎用OSに対応しつつ、高速処理、省電力、サイズ最適化などの技術を磨いています。
 そして、収集したビッグデータを蓄積・管理するデータベース技術では自社製品開発にも取り組んでいます(図2)。社会インフラやビジネス活動、生活などから集まるIoTデータは多種多様です。IoTサービスでは、単にデータを格納するだけでなく、データを簡単に素早く取り出し解析して活用することが必要になってきます。スマートグリッドやスマートシティで求められる大規模なデータベースの構築や運用、データ解析にも対応できるよう、私たちはそれぞれの技術分野でIoTサービスを支えています。
 このほか、Web GUIのアプリケーションフレームワークおよびユーザーインターフェース技術の開発も進めています。直感的、視覚的に状況を把握でき簡単に操作できるユーザーフレンドリーなインターフェースの役割は、お客さまにユーザーエクスペリエンス(UX)を提供する上で、ますます重要になってきます。
 さらに、IoTサービスを実現する上で重要なソフトウェア技術の一つに、文字や音声・画像などを知識処理するメディアインテリジェンス技術があります。東芝グループが長年取り組んできたこの技術は、IoT技術との融合による新しい可能性が期待されています。 「人の言動」のデータを知識処理して、「モノの動作」に関するデータと組み合わせて分析することで、センシングだけでは把握できない「意図理解」への扉が開かれます。
 例えば、フィールド作業の支援。設備機器の補修に駆け付けた保守員がつぶやいた言葉とIoTデータを組み合わせることで、メンテナンス手法の高度化につなげることもできるでしょう。人とモノ、両方のデータを蓄積し活用することで、これまでにないサービスを実現することができます。

IoT時代にさらに高まるセキュリティの重要性

天野 隆
 IoTサービスの本格化を背景に、改めてセキュリティへの関心が高まっています。すべてのモノがインターネットにつながることで、またその上でサービス事業を構築する中で、これまでのIT分野におけるセキュリティだけでなくOT(※3)分野でのセキュリティも含めて、全体をトータルでカバーする必要があります。とりわけ、社会インフラやヘルスケアなどの分野におけるセキュリティは極めて重要です。
 東芝グループには、情報セキュリティを専門とするベンダーとは異なる強みがあります。例えば、自社製のエンドポイントの機器に、セキュリティ機能を組み込むことができます。クラウドからエンドポイントまでカバーしたトータルなセキュリティを私たちは提供することができると考えています。
 最後に、ソフトウェア開発のグローバルソーシングについて。私たちはIoTサービス事業をグローバルに拡大するため、インドとベトナムに開発拠点を設けて、1000人以上の技術者がソフトウェア開発やデータ分析などに従事しています。
 今後、アジア地域など海外での社会インフラ構築プロジェクトにおいて、インドやベトナムの技術者が活躍する機会も増えていきます。国内の技術者とのコラボレーションを通じて、お客さまのIoTサービスをグローバルで支える大きな力に、そしてお互いに大きな刺激になると考えています。

※1 IoT:Internet of Things

※2 UML:Unified Modeling Language

※3 OT:Operational Technology

※本内容は東芝デジタルソリューションズ株式会社グループの情報誌「T-SOUL15号」の特集から転載しています。
※本記事に関する社名、部署名、役職名などは2015年7月現在のものです。
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