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CSR

Corporate Social Responsibility

SDGs達成への貢献を目指して!

早稲田大学准教授 ドミニク・チェン氏 講演会レポート 「デジタルで社会を豊かにできるのか?」 ~テクノロジーとウェルビーイングとの関係性を考える~

  • 講演を行う早稲田大学准教授 ドミニク・チェン氏

 

 2019年7月19日(金) 、川崎本社ビルにて、「日本的ウェルビーイングを促進する情報技術のためのガイドライン策定と普及」に取り組まれている早稲田大学准教授 ドミニク・チェン氏をお招きし、ウェルビーイングに関する社内講演会を開催しました。
 講演テーマを、『デジタルで社会を豊かにできるのか?』と題して開催し、社員がデジタルテクノロジーとウェルビーイングとの関係性を考える良い機会とすることができました。

 ウェルビーイング(well-being)とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する言葉です。1946年の世界保健機関(WHO)憲章草案の中で、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます(日本WHO協会:訳)」とされています。

 当社は、東芝グループの中でデジタルソリューションを担う事業会社として、『やさしく、あたたかなデジタルで社会を豊かにする。』をビジョンとして掲げ、デジタルソリューションにより社会課題の解決をめざすことにより、SDGs(持続可能な開発目標)達成へ貢献していこうとしています。SDGs は、2030 年に向けた持続可能な開発に関する地球規模の優先課題や世界のあるべき姿を明らかにした地球規模の取組みです。そして、人類全体が身体的、精神的、社会的に幸福な状態である『ウェルビーイング』を達成するための国際的目標でもあり、デジタルテクノロジーとウェルビーイングとの関係性を理解することは、当社のビジョン実現に向けて大切なことだと捉えています。

 また、東芝グループにとって本年は、経営戦略である東芝Nextプラン元年と位置づけており、東芝グループの成長とともにSDGs達成への貢献に向けたさまざまな取り組みを行っており、本講演会もその一環として開催しました。

  • 当日の会場の様子
    当日の会場の様子

 

 ドミニク・チェン氏は講演の冒頭で、今回の講演テーマである、『デジタルで社会を豊かにできるのか?』という直球の問いに対して、明確に「Yes」であると答えたうえで講演を始めました。

 デジタルで社会を豊かにするために大切な「ウェルビーイング」について、自らの研究の原点となった取り組みや、現在取り組んでいるデジタル・ウェルビーイングの最新の研究を紹介していただきました。

 「心臓ピクニック」という自分の心臓の鼓動を手のひらで感じることができるデジタルツールを紹介。これは、言語的な情報提示や数値的な情報提示ではなく、触覚的なフィードバックにより、無意識に自律的な感情移入を起こそうとするツール。これをワークショップにて多くの方に体験してもらったところ、「ちょっとあたたかくなる」といった反響が寄せられたとのこと。
 これは、デジタルテクノロジーを人間の心と調和する形で使いこなす取り組みであり、『やさしく、あたたかなデジタル』を理解するうえで、興味深い事例となりました。

 このような研究が活発になってきたのは、デジタルテクノロジーの発展によりウェルビーイングを低下させる事態が起き始めたためであり、デジタルテクノロジーをウェルビーイングという切り口で根本的に設計し直そうという動きが出てきたことが紹介されました。

  • 講演を行うドミニク・チェン氏(1)

 

 

 また、西洋から始まったウェルビーイング研究の歴史も振り返りながら、国内外の最新研究や取り組み事例を通して、ウェルビーイングの捉え方は文化や地域によって異なり、複雑であると説明され、そこに科学的なメスを入れて定量化しようという研究が進み始めていて、「西洋型ウェルビーイングから多極文化型ウェルビーイングへ」ということを最近議論していると紹介されました。

 そして、日本的ウェルビーイングの特徴として3つの構成要素があり、一つ目は、自らの行動を自らの意志で決める「自律性」、二つ目は、他者のウェルビーイングを考えそれを満たそうとする「思いやり」、三つ目は、思い通りにならない状況を「受け容れ」、自身の感情と向き合うことであると語った。そしてこの「受け容れ」という概念こそが、日本的ウェルビーイングを考えるうえで最も重要となる可能性があり、現在研究中であると語りました。

  • 講演を行うドミニク・チェン氏(2)

 

 この考えのきっかけとして、ある僧侶との話を紹介しました。僧侶に最近ウェルビーイングだったことをお尋ねしたところ、『自分の父親の死を看取ったこと』とのこと。その僧侶によると、『父親の死は悲しいことだが、死は不可避なものでもあり、父親は好きな人たちに囲まれて亡くなった。また自分たちも、そんな父親を看取ることができ、互いに満たされながら身近な人の死を受け容れることができた。』とのこと。このようなウェルビーイングは西洋では聞いたことがなく、日本独特の文化的な背景が、「受け容れる」という価値観につながっているのだろう」と語りました。

 この事例のように、西洋が今までうまく捉えきれなかった多様な価値観に目を向け、そこにデジタルテクノロジーを活用することが、『やさしく、あたたかなデジタルで社会を豊かに』していくことにつながるのではないかと語り、講演を終了しました。

  • 講演を行うドミニク・チェン氏(3)

 

 今回の講演は、東芝グループの経営理念「人と、地球の、明日のために。」のもと、社員が『デジタルテクノロジーとウェルビーイングの関係性』への理解を深め、「やさしく、あたたかなデジタル」が世の中の当たり前と未来に向け、『わたしたちができること、やるべきこと』を考える有意義な時間となりました。

  • 講演を行うドミニク・チェン氏 近影

 

【ドミニク・チェン氏プロフィール】
1981年生まれ。フランス国籍。博士(学際情報学)。 2017年4 月より早稲田大学文学学術院・表象メディア論系・准教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デザイン/メディアアート学科卒業、東大大学院学際情報学府博士課程終了。NTT InterCommunication Center研究員/キュレーターを経て、NPO クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現コモンスフィア)理事。
2008年に株式会社ディヴィデュアルを共同創業、オンラインコミュニティやゲームソフト開発を行い、Apple Best of Appstore 受賞。 2008年IPA 未踏IT 人材育成プログラム・スーパークリエイター認定。
2016 ~ 2018 年度グッドデザイン賞・審査員、「技術と情報」、「社会基盤の進化」フォーカスイシューディレクターを務める。XXII La Triennale Milano『Broken Nature』展でぬか床ロボット『NukaBot』、あいちトリエンナーレ2019『情の時代』展では人々の遺言の執筆。
プロセスを可視化する『Last Words』を出展。
主な著書に、『電脳のレリギオ:ビッグデータ社会で心をつくる』(NTT 出版)、『インターネットを生命化する:プロクロニズムの思想と実践』(青土社)、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック:クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』(フィルムアート社)等。共著に『情報環世界:身体とAI の間であそぶガイドブック』(NTT 出版)、『謎床:思考が発酵する編集術』(晶文社、松岡正剛との共著)等。訳書に『ウェルビーイングの設計論:人がよりよく生きるための情報技術』(BNN 新社、渡邊淳司との共同監修)、『シンギュラリティ:人工知能から超知能まで』(NTT 出版)。

 

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