緊急セミナーからニューノーマル時代を生き抜くヒントを読み解く!
コロナがもたらした変化と企業が進むべき道

イノベーション, イベント
2020年9月23日

 当社は、2020年7月にオンラインによる緊急セミナー「東芝からの提言 コロナと共存するニューノーマル時代のデジタル変革」を開催。コロナ禍により多くの企業で課題となっているリモートワークでの人材の質の維持・向上、製造現場における3密・感染拡大防止策、非接触・リモートでの設備運用・保全、グローバルサプライチェーンの分断に備えたレジリエント(強靭)な調達の仕組みづくりなど、東芝自身の取り組みも含め、ニューノーマルへの対応の課題、具体事例から学ぶ解決策などを紹介した。今回は、特に反響の大きかったセミナーをピックアップし、ニューノーマル時代を生き抜くための新たな働き方や事業オペレーションに向けた取り組みのヒントをお伝えしたい。        

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に蔓延し、いまだに収束の兆しが見えない中、企業には新型コロナによる変化が常態化した「ニューノーマル」の時代に対応すべく、新たなビジネスの仕組みづくりが求められています。ニューノーマルにおいては、従業員の安心・安全を考慮しながら事業を継続できる環境づくりに向けて、働き方や業務オペレーションの見直しが待ったなしの状況にあることは間違いありません。そこで重要になってくるのが、リモートワークにおいても事業の効率化、生産性向上を実現できる、デジタル技術を駆使したワークスタイルやビジネスの変革です。

リモートワークにおける新たなブレンディッドラーニングとは

 コロナ下での新入社員向けの集合研修に代わる教育機会を提供すべく、当社は2020年3月から6月までeラーニングクラウドサービス「Generalist/LW」の無償提供をいち早く実施。新人研修向けの社会人基礎力やテレワーク導入の基本講座など、人事部門が必要とする実践的なコンテンツを提供し、わずか3か月間で120社以上の企業から申し込みがあるなど、大きな反響を呼びました。
 新型コロナの影響でリモートワーク環境への移行を余儀なくされた企業では、人事部門が行う新人教育や管理職向けの教育といった、集合研修における新たな環境づくりの課題が顕在化しています。実際、お客様からの問い合わせとして、「集合研修の代替としてeラーニングはどのように活用できるのか」といった基本的なものから、「自社に適した市販コンテンツはあるのか」、「どうすれば利用頻度が向上するのか」、「ZoomやTeamsといったWeb会議ツールとオンライン研修をうまく連携できるのか」といった声が数多く寄せられています。
 このような声を踏まえて、セミナーでは7,400社もの企業に採用いただいている「Generalist/LW」を軸に、リモートワークでのより効率的・効果的な社内教育に向けた新たなブレンディッドラーニング(ブレンディング教育)について解説。モバイルデバイスによるマイクロラーニングを取り入れた効果的なeラーニング活用術をはじめ、有用なコンテンツをシェアして活用できるコンテンツコミュニティークラウド、Teamsにて開催したセミナーを録画したオンデマンドコンテンツを配信する機能などについて分かりやすく紹介し、多くのセミナー受講者からの問い合わせが相次いでいます。

Withコロナ時代の新しい製造現場のあり方

 新型コロナが世界的に蔓延したことで、製造現場にも新たな変化の波が押し寄せています。従来の製造現場における安全確保に加え、生産継続に向けて、従業員の安心・安全の確保がより一層重要になっています。しかしながら、「密」を防ぐために人員を減らすと作業効率が下がり、従業員が対面で会話する機会が少なくなるとチームワークが低下する可能性もあります。生産性の向上と従業員の安心・安全の確保をどう両立するのか、難しい現実に直面しているのが今の製造現場の実態です。
 この二律背反した課題の解決に有効なのが、これまでのモノを中心としたデータの収集・活用に加え、新たにヒトに関するデータの収集・活用ができるツールです。安心・安全の確保においては、ヒトの動きを把握できるようにすることで、作業エリアでの距離の保ち方や接触機会の減らし方などを具体的に検討でき、感染者や濃厚接触者が出た場合の調査にも役立てることが可能になります。一方で生産性の向上においては、ヒトの動きを感知・分析して作業負担の偏りや不要な移動を把握し、現場作業の効率化・適正化を実現できます。対面や会話の機会が減ってもチームワークを保てる新たなコミュニケーションツールを利用しながら、生産性を向上することが可能となります。
 そのような作業環境づくりに向けて、当社は2020年6月に「Meister Apps 現場作業見える化パッケージ」の提供を開始し、IoTでヒトの情報を収集・見える化することで生産性と安心・安全を両立する活動を支援しています。ヒトの活動データを統合的に管理できるMeister Apps現場作業見える化パッケージは、ハードウェアとソフトウェアをキッティングし、サブスクリプションで提供しているため、すぐに製造現場に適用することが可能です。
 セミナーでは、2つのユースケースの紹介を交えて、従業員同士の距離を保つことで安心・安全な現場を維持しつつ、動作・作業時間を把握して省力化できる業務を見つけ出し、作業分担の適正化で生産性向上を可能にする手法を詳しく紹介しています。

レジリエントなサプライチェーン構築に向けた調達リスクコントロール

 サプライチェーンがグローバル化している今、新型コロナによって、モノづくりに必要な物資の供給が途絶するリスクが露呈し、製造業に甚大な被害をもたらしています。同時に、生産拠点の一極集中によるリスクも顕在化。生産拠点の分散化など、サプライチェーン全体の見直しを進めている企業も多いと思われます。さらに近年、台風や豪雨といった自然災害が頻発。中には、3.11後に見直した取引先の状況を把握するためのサプライヤーマップが有効に機能しないというケースも見受けられます。
 そんな状況を打開するには、リスクに柔軟に対応できるレジリエント(強靭)なサプライチェーン構築が必要不可欠であり、サプライヤーの情報を的確に把握したうえで、戦略的な調達が可能な仕組みづくりをいち早く進めることが有効です。このためには、平時からサプライヤー情報を共有・整備しサプライヤーとのやり取りを緊密にするためのコミュニケーション基盤の整備をはじめ、グローバルの災害情報を的確に捉え、災害発生時に迅速な初動対応ができるようにし、サプライチェーンの見える化とリスク管理を行っていくことが重要になります。
 そんなレジリエントなサプライチェーン構築の一助となるのが、調達部門とサプライヤー間のコミュニケーション基盤となる戦略調達ソリューション「Meister SRM」です。一次サプライヤー、その先の二次、三次、n次のサプライヤー情報を格納し、ある地域で災害や生産停止が発生した際に、調達している部品に影響があるか否かを即座に把握でき、また、サプライヤーの重複度やリスクを見える化することで、リスクも考慮した最適なサプライチェーン配置に向けた先手管理を可能にします。
 セミナーでは、サプライヤー情報の整備やBCP管理の勘所を紹介しながら、精密機械メーカーのBefore/Afterの事例を用い、その有効性をアピール。想定されるリスクに備えるべく、サプライチェーンのレジリエンスの確保に向けた有効な手立てとしての環境づくりのコツを紹介しました。

非接触・リモートに対応した設備運用・保全とアセットサービス化

 モノづくりの現場には、数多くの設備が導入されており、その運用・保全業務は製造現場を安定稼働させるためには欠かせないものです。この設備運用・保全の現場にも、新型コロナは影を落としています。現場への入場制限はもちろん、移動制限によってメンテナンスの延期を余儀なくされるほか、3密回避のために1人作業を強いられる現場もあります。また、作業者間の距離の確保や工具の消毒などの安全配慮による負担増や、海外からの部材調達の停滞による、保守部品の在庫不安といった問題も顕在化しています。加えて、設備投資の抑制により新規の設備販売が厳しくなっており、これが長期化すると、設備老朽化により故障や保守作業が増加し、保守部品在庫や保守員の増強が必要になる可能性もあります。
 このような課題を解決するために有効なのが、リモート監視です。保全作業を請け負う設備メーカーは、以前からリモート化やデジタル化に積極的に取り組んできましたが、それはあくまで生産性向上が目的でした。しかし、従業員の健康と安全を確保しながら非接触で業務を継続することが最優先事項となっている現在において、リモートによる監視業務への移行は、その課題解決においても高い効果を発揮します。備メーカーは、以前からリモート化やデジタル化に積極的に取り組んできましたが、それはあくまで生産性向上が目的でした。しかし、従業員の健康と安全を確保しながら非接触で業務を継続することが最優先事項となっている現在において、リモートによる監視業務への移行は、その課題解決においても高い効果を発揮します。
 また、リモート監視等を活用して、設備機器そのものを販売するビジネスから、設備機器の利用に応じて対価を得るアセットサービスに転換することで、納入先の工場やプラントが稼働している限り利用されるため比較的安定的な収入を見込むことができ、保全品質を落とさずに現場作業を極小化・効率化し利益率の向上もはかることができます。
 設備の運用・保全のリモート化、アセットサービス化に役立つのが、設備メーカー向けのアセットIoTサービス「Meister RemoteX」です。このサービスには、約40年にわたって産業機械や社会インフラシステムの遠隔監視を行ってきた東芝のノウハウが凝縮されています。Microsoft Azure上で提供されるクラウドサービスのため、すぐに導入できるほか、ビジネスの拡大に応じて柔軟に拡張が可能であり、APIの提供によりMicrosoft Azureのサービスなどと容易に連携が可能です。セミナー内ではダッシュボード画面のイメージを交え具体的な機能を解説しながら、設備メーカーの成功事例として、事業安定化に向けたアセットサービスのビジネス化を紹介。業界全体を最適化していくためのプラットフォーム構想にも触れながら、Meister RemoteXの将来像について言及しています。

 今回のセミナーでは、コロナと共存するニューノーマル時代のデジタル変革について、基調講演を含め9つのテーマで動画コンテンツを配信しています。これらのコンテンツでは、コロナ禍により「待ったなし」で対応を迫られたテレワークや3密防止対策にとどまらず、デジタルテクノロジーをもっと活用し、「先を見据えた」ワークスタイル変革、ビジネス変革、事業オペレーション・サプライチェーンレジリエンスなどを推し進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みを提案しています。

 新型コロナによる「危機」を、従来の課題を抱えたままの事業オペレーションや仕事の仕方などから脱却する「変化への機会」ととらえ、自らの意思で「選択的」に「変化」を取り込み、次の時代にふさわしい「進化」に向けて、ニューノーマル時代に適応するDXに今すぐ取り掛かるべきであると考えます。
執筆:てんとまる 酒井 洋和
  • この記事に掲載の、社名、部署名、役職名などは、2020年9月現在のものです。

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