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食品業界を支える農産品物流の危機を救え!
鍵を握る"共創"の取り組みとは?

更新日:2018年2月23日

昨今、人手不足や再配達、最新技術を駆使した生産性向上の取り組みなど、話題に事欠かない物流業界。行政や民間企業による様々な施策が計画・実行される中、食品業界を支える農産品物流の動きも新たな潮目を迎えようとしている。現状の課題や改善に向けた取り組みを参照しながら、今後どのような未来が待っているのかを考えてみたい。

国が掲げる、農産品物流の現状と課題

2018年1月30日、政府が今後推進していく物流施策を取りまとめた「総合物流施策推進プログラム」が発表された。これは、物流に対する新しいニーズに応え、日本の経済成長と国民生活を持続的に支える「強い物流」の実現に向けて、取り組むべき施策や目標・指標を具体的に示したもの。インフラ強化や新技術の活用による効率化・生産性向上をはじめ、人材育成、働き方改革、災害等のリスク対策、地球環境問題への対応など、様々な視点から99に及ぶ施策を掲げている。

トラックドライバー不足や再配達をはじめとする様々な問題が世間一般にも広く浸透し、課題解決に向けた今後の動向に期待がかかっているが、それは食品業界を支える農産品物流においても同じことがいえるだろう。

農産品物流が抱える大きな課題のひとつは、生産構造(生産量が天候に左右される、多品目かつ小ロットなど)や品質特性(腐敗や傷がつきやすい、温度管理が必要など)、消費者ニーズ(鮮度や味を重視、多頻度少量で購入したいなど)への対応によって、生産者及びトラック輸送者に大きな負荷がかかっていること。ただでさえ物流業界全体でトラックドライバー不足が叫ばれる中、特に農産品の輸送は、「長時間の拘束」「重労働」「運行管理が難しい」「小ロット多頻度輸送」といった要因により、運送業界から敬遠される場合もあるという。

そのほか、海外輸出を強化するためのコールドチェーン物流の整備や、IT活用による集荷システムの効率化、鉄道・船舶へのモーダルシフトなど、農産品物流の改善に向けて取り組むべき事柄は多岐にわたる。

こうした課題に対応すべく、農林水産省、経済産業省、国土交通省は2016年12月21日に「農産品物流対策関係省庁連絡会議」を設置。業界団体や民間企業とも意見を交えながら、これまでに計5回に及ぶ会議を開催(2018年2月14日現在)し、パレットの活用や共同配送、商慣行の見直しなどが課題解決に貢献しうる施策として期待されている。

本稿ではいくつかの施策に絞って、民間企業や業界団体による先行事例も交えながら、農産品物流のトレンドを紹介したい。



ドライバーの負荷を大幅に軽減する「一貫パレチゼーション」

現状、農産品の出荷前や入荷時における積み下ろし作業は、手作業が主流となっている。しかし、手積み・手下ろしは重労働かつ長時間を要するため、トラックドライバーへの負荷が大きく、非効率な点が課題である。

これを解決する手段として検討されているのが、「パレット化やフレコンの活用」。ダンボールや紙袋のばら積みから、パレット積みやフレコン輸送に切り替えることで、トラックドライバーの作業時間を短縮し、身体的負荷も削減できる。

実際に、ホクレン農業協同組合連合会によるパレット輸送の取り組みでは、積み下ろし時間が従来の2分の1から3分の1程度に短縮され、その時間を有効活用して配達先が2市場から3市場に増加したという実績も報告されている。

パレット化やフレコンの活用において鍵を握ると考えられているのは、発地から着地までパレット積みの荷物を取り崩すことなく一貫して輸送・保管する「一貫パレチゼーション」だ。荷姿の標準化とフォークリフトを用いた荷役により、作業効率は大幅に向上し、荷役スペースの有効活用といった効果も見込めるという。

一方、パレットの所在管理が難しく、紛失コストが発生する可能性がある点、各事業者でパレットのサイズが異なったり、ダンボールのサイズがパレットのサイズに適していなかったりなど、規格の非統一による作業が発生する点など、解決すべき課題もいくつかある。実現にあたっては、各関係者が密に連携し、運用ルールの遵守や規格の標準化に務める必要があるだろう。

※フレコン・・・フレキシブルコンテナの略。柔軟性の高い材料で袋状に作られ、吊り上げるためのつり部と、注入・排出ができる開口部を備えたコンテナ。


各業界に浸透しつつある、「共同輸送」の考え方

農産品はその性質上、各産地から多品目を小ロットで輸送するため、積載効率が悪くなりがちである。さらに、輸送する側としても各集荷場を回る手間がかかり、集荷場が多いほど待ち時間などのタイムロスも発生する。

こうした非効率性を改善する施策として、それぞれの産地から出荷されている小ロットの農産品を広域物流拠点に集積し、大ロット化する「共同輸送」に注目したい。現状各集荷場から個別に輸送されている農産品を集約して幹線輸送できれば、積載率の向上や物流の効率化に寄与できるだろう。実現にあたっては、各関係者による連携先の発掘・調整、最適な運行ルートの設定や拠点となる場所の検討、共同化できるインフラの活用方法や新規導入の検討などが必要である。

農産品ではなく食品業界の事例ではあるが、味の素をはじめとする国内食品メーカー6社による「F-LINEプロジェクト」の取り組みが参考になるかもしれない。同プロジェクトは、食品物流の諸問題を解決するための戦略を協働で立案していくもの。具体的には、ドライ品に関して6社による「物流拠点の共同利用」や、配送を集約してトラックの積載効率を高め、得意先までの輸送経路を高密度にする「高密度エリア配送」を検討している。北海道エリアでスタートした共同配送では、平均積載効率の向上のみならず、CO2排出量の削減といった効果も表れているそうだ。

さらに2016年12月1日には、味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社が北海道エリアおよび九州エリアでの共同物流体制の構築を目指し、物流事業の合弁会社発足の契約を締結したことを発表。今後、食品メーカー4社は2019年の物流子会社の統合も視野に入れた全国展開の検討を開始するとともに、F-LINEプロジェクト参加メーカー6社で連携し、持続可能な物流体制の実現を目指していくという。

また、トラックの共同輸送や、発地と着地の中間に中継地点を設置して荷物を交換する「中継輸送」の取り組みも、トラックドライバーの労働時間削減や積載率向上に貢献できると考えられており、すでに他業界ではいくつかの事例も出てきている。
例えば、国内初の取り組みとして注目を集めたイオンと花王の中継輸送では、両者のトラックが関東と中部からそれぞれ自社の商品を輸送し、静岡県内の中継地点でトレーラー(積荷)を交換。受け取った荷物を相手企業の配送先へ輸送することで効率化を実現しているのだ。



ICTの活用が、トラックドライバーの労働環境を大きく改善する

トラックドライバーの負担軽減という観点では、「トラック予約受付システムの導入」にも大きな期待が寄せられている。従来、物流センターにおける入出庫対応はトラックが到着した順番に行うことが多いため、事前に荷物を下ろす手順を決められない点が非効率的で、荷待ち時間の増加の一因となっている。そして、ドライバーは荷待ちを避けるために朝早く、あるいは前夜から順番待ちで待機するという状況も発生。1運行あたりの平均拘束時間は13時間を超え、荷待ち時間は平均で1時間45分にも及ぶともいわれているのだ。

こうした環境を改善すべく、一部の物流拠点において、ICTを活用したトラック到着時間等の予約受付システムが導入され始めている。シーオスが開発した「TruckBerth」は、ドライバーはスマートフォンやタブレット端末から、バース(積卸スペース)の空き時間をリアルタイムで確認して予約を入れることが可能。GPS機能を用いることで、各ドライバーと直接連絡することなく、各車両の位置情報を管理し、倉庫到着が遅れそうな車両の状況も把握できる。同社と大塚倉庫、セイノーホールディングスの3社で協働した「バース予約による待機時間削減、生産性向上、およびCO2削減」事業は、長時間労働の温床となるトラック待機時間を減少・生産性を向上するとともにCO2排出を削減する取り組みが評価され、2017年度の「グリーン物流パートナーシップ優良事業者(経済産業大臣表彰)」を受賞している。

ニチレイロジグループも2017年10月26日より、トラック事前予約システムの運用を開始。物流センターごとに設定された時間帯別の入出庫可能枠に対してトラック側が入出庫の希望時間を予約できる。さらに、あらかじめ積荷明細(運送依頼書や送り状)を物流センター側に送付することで、従来はトラック到着後に行っていた運送会社の照合、オーダーの照合を事前に実施することができるようになり、到着からトラックバースへの誘導をよりスムーズに行えるようになるという。

とあるトラック予約受付システムでは、1台あたりの平均待機時間が24分に短縮され(約70%削減)、倉庫の1時間あたりの取り扱い貨物数は833個に増加する(約20%増加)という国土交通省の報告にもあるように、ICT活用によって確かな改善が期待できる当施策。政府としては、さらなる導入拡大を推し進めるとともに、今後は産地から消費地までの物流合理化にICTシステム等を導入したり、卸売市場内におけるICT導入も促進していく構えだ。ほかにも、物流倉庫内の入荷?出荷作業の効率化とサービス品質向上が望めるWMS(倉庫管理システム)など、ICTはあらゆるシーンでその力を発揮しており、物流業界の改革における重要なキーワードであることは間違いない。



"競争"の時代から、"共創"の時代へ

上記で取り上げてきたトピックからわかるように、農産品物流の課題はイチ事業者や限られた団体だけで解決することは難しく、関係各所との協力が欠かせない。

「農産品物流対策関係省庁連絡会議」でも、農産品の物流を持続させるポイントとして、「各関係者が物流関係者と緊密に連携し、トラック輸送への負荷の軽減、物流の効率化を図ることで、持続可能な物流を実現していくことが必要であり、関係省庁は連携して各業界の取組を後押ししていくことが重要である」と述べ、さらに「その際、各関係者にとってWin-Winの結果が得られるよう、取組の負担と受益を分かち合うことが取組の成功、継続にとって重要」という見解を示している。

これはつまり、物流関係者のみならず、生産・出荷や卸売、小売など農産品物流に関わる様々な関係者が協力し合い、時には負担も分かち合うことで、長期的に業界全体でメリットを享受することを目指しているのだ。

効果的な協力関係の事例として最後に紹介したいのが、有機・特別栽培の農産物やミールキットなどの食品宅配を展開するオイシックスドット大地とヤマト運輸による共同研究「ベジネコ」プロジェクトだ。同プロジェクトでは、双方が持つ生産者ネットワークと輸送ネットワークを組み合わせることで、生産者の輸送手段を統合し、ヤマト運輸の全国約4,000箇所の営業所を活用するなどして、安定的かつ効率のよい物流の構築を共同研究する。さらに、ヤマト運輸の物流ターミナルからオイシックスドット大地の物流センターへ、必要な農産物を必要なタイミングで一括納品するしくみの構築も目指すという。

"競争"の時代から"共創"の時代へと移行しつつある物流業界。上記事例のように手を取り合う動きがさらに活発化することで、農産品物流の改善が図られ、業界全体でメリットを享受できるような環境が生まれることに期待したい。

コラム&レポート


ライタープロフィール

ライター:松山 響
大手広告代理店や電気通信事業者のオウンドメディアにて、取材・ライティングを担当する。若者の実態調査、地方創生プロジェクトに関する記事を継続して執筆。また、生協の週刊情報誌の編集に創刊から携わり、食と安全にも明るい。


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