ニュースリリース

英国鉄道Greater Angliaと東芝デジタル&コンサルティング
CPS技術を活用した鉄道運行計画作成の取組開始で合意

2019年9月10日

株式会社 東芝
東芝デジタルソリューションズ株式会社
東芝デジタル&コンサルティング株式会社

 東芝デジタル&コンサルティング株式会社(以下、TDX)は、英国の鉄道会社Greater Anglia(以下、GA) と、GA が英国東部で展開する鉄道運行事業において、サイバー・フィジカル・システム(CPS)技術を活用した鉄道運行計画作成のプロジェクトに取り組んでいくことで合意しました。

 TDXと、株式会社東芝(以下、東芝)、東芝デジタルソリューションズ株式会社(以下、TDSL)は、三井物産株式会社(以下、三井物産)とデジタルトランスフォーメーション分野で提携し、成果共創型のデジタルビジネスの創出に取り組んでいます。今回、三井物産はGA 、TDXの双方への出資者として、本プロジェクトの成立に向けて戦略的に取り組んできました。また、東芝およびTDSLは、東芝 研究開発センターが有する最新のAI技術と、TDSLが提供するデジタルソリューション技術でTDXをサポートしており、4社によるプロジェクトとしての総合力が評価されました。

 本プロジェクトでは、CPS技術の1つであるデジタルツイン注1技術を活用して運行計画の策定を支援することで、よりロバストな運行計画の作成注2注3を実現し、運行パフォーマンスと、顧客利便性のさらなる向上を目指します。具体的には、従来個別に管理されていた線路インフラ、車両性能、タイムテーブル、各種規制やルールなどのデータをTDXがデジタルデータとして整理、集約した上で、サイバー空間に現実世界(リアル)の列車運行環境を精緻に再現。東芝グループの技術をベースにした各種シミュレーション、モデリングエンジンを活用して、運行計画の分析、各種条件下でのシミュレーションを実施し、GAに対して新しい知見を提供することで、より高度でロバストな運行計画の作成を支援します。さらに、東芝 研究開発センターとTDXが共同で新たに開発した手法を導入して、遅延リスクを評価します。これによりGAは列車遅延リスクの低減を実現しつつ、顧客利便性・顧客満足度の向上、経営効率の改善につながる運行計画の策定を実現していきます。

 英国では、鉄道事業の民営化以降、列車運行事業とインフラ管理事業が分離されており、かつ複数の鉄道会社が同じ線路インフラを利用してサービスを提供していることから、運行計画作成の業務が非常に複雑になっています。また2018年5月に英国の他地域で発生した大規模な鉄道遅延問題以降、より正確な鉄道運行に対する国民の期待も高まっています。
 加えて、GAは、新車両への入れ替え、新しいサービスの運行、さらなる顧客満足度向上のためにさまざまな施策の展開を進めており、運行計画作成業務のさらなる複雑化が予想されることから、高い運行パフォーマンスを実現するための新しい技術、新しいアプローチを模索していました。そのような中で、GAの経営に参画する三井物産との提携関係にあるTDXは、GAと2018年から一部区間で実際にデジタルツインを活用した運行計画作成による改善のフィジビリティ・スタディ(実行可能性調査)を実施してきました。その結果、改善効果が見込まれることから、両社の間で今回の合意に至りました。

 今後も東芝グループは、三井物産との連携により、グローバル市場に向けて新たな経済価値を創造する成果共創型のデジタルビジネスを展開していきます。

 本プロジェクトに関して、GAの運行計画部門の責任者のキース・パルマー氏は、「乗客の利便性向上のため、TDXと三井物産と共に、日本のノウハウを用いて運行改善に取り組むことは非常に喜ばしい。運行計画作成業務は非常に複雑であり、既存の取組みの改善に向け、今回の新しいシステムを歓迎します」と述べています。

 TDXの取締役社長 沖谷宜保は「東芝グループのデジタル技術を活用し、GAの顧客利便性・顧客満足度の向上、経営効率の改善につながる運行計画の策定を支援していきます。さらに今後は、英国の他の鉄道会社に対するサービスの展開と、デジタルツイン上での精緻なシミュレーションとAI技術による、車両計画や乗務員計画の最適化、保全計画の最適化などにもサービスメニューを拡大していくことを計画しておりCPSテクノロジーを活用した事業展開を加速させていきます」と述べています。

 三井物産 モビリティ第一本部 交通プロジェクト部 部長 志水靖氏は「当社は、グローバルネットワークを活用して様々なパートナーと共に革新的な取り組みを持ち込み、英国鉄道市場の発展に貢献することを目指しており、当社が出資参画するGreater Angliaに今回、東芝のデジタルツインとAI技術を用いた、鉄道運行計画策定支援・コンサルティングサービスを紹介することにより、同社の車両運行サービスの最適化と事業収益性改善に寄与できることは大変嬉しく思う」と述べています。

今回の取り組み概要

図:今回の取り組み概要

GAで従来個別に管理されていた線路インフラ、車両性能、時刻表、各種規制やルールなどのリアルデータに基づき、TDXがサイバー空間に列車運行のデジタルツインを構築し、運行計画の分析、列車走行のシミュレーションを実施。そこで得た新しい知見をリアルな運行計画にフィードバックする。

  • 注1 デジタルツイン:現場の出来事をデジタル上に忠実・精緻に再現し、高度なシミュレーション・将来予測分析や過去事象分析につなげること
  • 注2 ロバスト:不確定な変動に対して特性が現状を維持できる能力
  • 注3 ロバストな運行計画の作成:列車車両の遅延などにより、予定していた運行計画からずれが生じた場合に、遅延を改善させたり、他の列車が影響を受けにくい運行計画を作成すること

Greater Angliaについて

Greater Anglia フランチャイズは、2016年10月16日に新たに運営を開始しました。エセックス、サフォーク、ノーフォーク、ケンブリッジシャーおよびハートフォードシャー地域に渡り、スタンステッドエクスプレスを含め、都市間を結ぶ列車、通勤列車、地方線などさまざまな鉄道サービスを提供しています。3,000人以上の従業員を有し、1日当たり1,300の列車を運行し、133の駅で業務に携わっています。

Greater Angliaは、イースト・アングリア地域の鉄道を大きく変える取り組みを進めています。2019年度より、すべての車両を空調、電源、USB、無料高速WiFiを備えた新車両に入れ替え始めています。また、運行本数の増発やピーク時の座席数の増加など、より利便性の高いダイヤを導入していきます。
https://www.greateranglia.co.uk/newtrains/latest-news

東芝デジタル&コンサルティング株式会社について

サイバー・フィジカル・システム(CPS)を実践するデジタルトランスフォーメーションのグローバル・ビジネスイノベーターとして、お客さまとともに新たな経済価値を創造します。東芝グループが長年にわたり培ってきた幅広い事業領域の知見や実績とAIやIoTなどのデジタル技術の強みを活かし、エネルギー・社会インフラ・製造・モビリティなどのビジネス領域を中心に、潜在課題や次世代の成長の種を掘り起し、コンサルティングからサービスデザイン、価値創造の確認までの一貫したサービスを提供します。
https://toshiba-dx.com/toshiba-dx/

以上