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2015年3月9日 高度な音声技術や画像技術を駆使したメディアインテリジェンスが
コミュニケーションの新たな姿を作り出す
1941年、福島の地に誕生した株式会社東邦銀行様は、2011年に発生した東日本大震災後にコーポレートメッセージを「すべてを地域のために」と改め、現在も継続して福島の復興・発展に大きく貢献すべく様々な活動を積極的に行っている。その震災復興を支援する活動の1つとして手掛けているのが、営業店に足を運ぶのが困難な県外避難者がいつでも相談できる、インターネットを利用した「相続相談サービス」だ。このサービスは、音声認識や音声合成、知的対話エンジンなど高度な音声技術を持つ東芝グループと東邦銀行様との共同研究・共同開発によって誕生した。音声技術や画像技術を駆使した“メディアインテリジェンス”が、人々の生活に役立つ新たなインフラとして活躍している。

Solution

社内向け展示会で出会った音声技術を新たなサービスとして検討

東芝ソリューション株式会社 商品・技術統括部 次世代ソリューション商品技術部 参事 林 政浩 東芝ソリューション株式会社
商品・技術統括部
次世代ソリューション商品技術部
参事 林 政浩

 東芝グループの中でコア技術を研究している研究開発センター(Research & Development Center。以下RDC)では、人々の生活に役立つ仕組みに欠かせない様々なコア技術を研究・開発している。その技術の中には、高い技術力を誇る音声技術や画像技術を総称した“メディアインテリジェンス”と呼ばれる領域があり、音声分野では音声認識や音声合成、知的対話、同時通訳などが研究され、画像分野では画像認識や画像解析に関する研究が日々行われている。メディアインテリジェンスはRDCにおける研究開発のひとつの柱に数えられているが、この音声技術に関心を寄せたのが、商品・技術統括部で商品企画を担当していた林だった。「社内で実施されたRDCの技術展示会で、優れた音声技術を目の当たりにし、金融機関向けの新たなサービスに応用できないかと考えたのです」と林は話す。
 実は、金融機関向けの新たなサービス開発を検討していたアカウント営業の小林とともに、長年お付き合いのあった東邦銀行様に以前から提案活動を行っていた経緯がある。「金融機関に向けた接客業務をサポートするサービスを検討する中で、インターネットというチャネルを利用する相談サービスができないかと考えていました。もともとテキストによる自動対談で顧客サポートを行う他社事例があり、東芝グループ内でも同様のことができないものかと探していたのです」(小林)。そんな中、社内の技術展を巡っていたところ、より高度な音声を使った知的対話に出会ったのだ。「我々が考えている新しい接客サービスと組み合わせることで、強力なツールになると考えたのです」(林)。その話をRDCに持ちかけたところすぐに意気投合し、東芝グループ一丸となって商品化へ向けて結束することになったという。

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新たなイノベーションに向けた共同研究を東邦銀行様とスタート

 実は、今回のプロジェクトで共同研究を行った東邦銀行様の方でも、復興支援に繋がる新たなサービスを模索している最中だった。「大勢の県外避難者が今でもいらっしゃる中で、震災復興のためにお客さまに役に立てるサービスがないか検討されていました。我々が相談サービスについて提案したところ、ちょうど東邦銀行様のニーズにマッチしたのです。しかも、一般的な窓口業務ではなく専門性の高い相続に関する相談のシーンで検討したいというお話でした。他にはない、先進的な取り組みへの挑戦でした」。そもそも、音声対話を利用した一般的な問い合わせサポートの仕組みはAppleのSiriなど著名なものがあるが、専門性の高い業務分野での応用については他に例がなかったといっても過言ではない。そこで、広範囲な音声技術を持つ東芝グループと、相続業務に関するノウハウを持つ東邦銀行様が共同研究を行うことで、これまでにない新たなイノベーションを起こすためのサービス開発を行うことになったのだ。

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3カ月で作り上げたプロトタイプがプロジェクト推進の大きなエンジンに

東芝ソリューション株式会社 流通・金融ソリューション事業部 流通・金融商品企画部 新規事業営業担当 参事 小林 辰生 東芝ソリューション株式会社
流通・金融ソリューション事業部
流通・金融商品企画部
新規事業営業担当
参事 小林 辰生

 そこで、林がプロジェクトマネージャとなり新たな相続相談サービスの共同研究がスタートしたが、最初に行ったのは実際に動くプロトタイプを作ることだった。「具体的に動くものを見ていただく事で、お客様の社内でも実現イメージを早い段階から掴んでいただくことができました。実際には3カ月間で作り上げることができましたが、これがプロジェクトの推進に非常に役に立ちました」と林は当時を振り返る。
 このプロトタイプ作りについて、Webサイトの設計や応対を行うキャラクターデザインを手掛けたデザインセンターの松井は、相続に関する業務が具体的にイメージできていなかったこともあり、まずは納得のできるフローをしっかり固めていくことから始めたという。「相続というイベントは機会が少なく経験のない方ばかりで、ユーザの視点で考えると知らないことがたくさんあります。そこで、相続に関して必要な手順をしっかり示した上で、必要な情報の達成率を可視化するなど、対話の中で堂々巡りにならないよう配慮しながらデザインしていきました」(松井)。
 同様に、音声技術の研究・開発を行っていたRDCの永江も、松井同様に相続業務の具体的な流れがイメージできていなかったという。そこで、林を中心に数百ページに及ぶ東邦銀行様の事務規程を読み解く作業を開始。同時に、相続に関する参考文献を調べながら法律の知識を習得し、それらの知識を持ち寄って対話のフローを作っていくためのミーティングを頻繁に行ったという。
 そのかいもあって、プロトタイプをお披露目した時の反応は驚きを持って迎えられたという。「音声を使って業務支援できるのかという懐疑的な見方がある中、実際に相続に関する相談がスムーズに行われていることに驚かれたようです」(小林)。
 ただし、対話の際にキャラクターが話す文言については、念入りなチェックが入ったという。「頭取自ら文言を赤入れしていただくなど、お客さまの言葉遣いに対するこだわりは我々の想像以上のものでした。なるべく平易な言葉を意識したつもりでしたが、もっとお客さま目線に立った丁寧な言葉遣いにしてほしいと指摘を受けたのです。研究所としてお客さま目線に立ち切れていないというところは大きな反省点でした」と永江。

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フィールド調査で確信を高めるも、自然な流れでのシナリオ作りに苦労

株式会社東芝 デザインセンター デザイン第二部 UI・UX第二担当 松井 藍 株式会社東芝
デザインセンター
デザイン第二部
UI・UX第二担当
松井 藍

 プロトタイプを作り上げることで関係者に具体的なイメージを伝えることに成功したものの、そもそもこの仕組みが世の中に受け入れられるかどうかどうかが危惧されていた。「これまで世の中にない、まったく新しいサービスだったことで、受け入れられるかどうかを事前に立証することが困難でした」と林。そこで永江が中心となって行ったのが、利用者を想定したフィールド調査だった。「若い利用者から抵抗なく利用していただけることは想定していましたが、実際に調査してみると40〜60歳台の女性にとても好評でした。定性的なコメントでも肯定的な意見が多く、我々はもちろんですが、東邦銀行様にも世に出しても大丈夫だと確信を持っていただく事ができました」(林)。
 また、実際に相続の相談を受け付けている営業店の担当者に操作してもらいフィードバックを受けるなど、妥協せずにサービス内容に改善点を盛り込んでいったと小林。「東邦銀行様は業務で利用するためにタブレットが営業店に配付されていました。このタブレットから実際にサービスに触れていただき、使い勝手を確認していただきました。世の中にない仕組みだからこそ、実際の評価検証には十分時間を割く必要があったのです」(小林)。それでも、実際に利用した担当者のおよそ7割から業務の効率化に繋がるという声が集まり、ネガティブな意見はほぼ上がってこなかったという。
 この過程で苦労したのは、相続に関するシナリオ作りだったと永江は振り返る。「最初はいかに少ない手順で答えに辿りつけるのかという効率的なフローを考えていましたが、自然な流れではないという指摘をいただいたのです。そこで現場の方にお話を何度も伺いながら、自然な対話の流れを検討していきました。効率を優先するのではなく、どうやったら自然な形で対話が成り立つのかというシナリオを作るのは大変でした」。林の方でも「知っている人が知らない人に説明するというのはとても難しいもの。知ってしまった瞬間に知らない人の気持ちがわからなくなります。改めて知らない人の気持ちに戻ってシナリオを作っていくという作業は苦労しました」とシナリオ作りの困難さを振り返る。

 デザインセンターの松井が担当したのは、Webサイト周りのリニューアルとともに、対話の主体者となるキャラクターデザインだ。「キャラクターはユーザー体験の良さ、すなわちUX(ユーザー経験価値)に関わるもの。できるだけ親しみを感じてもらえそうな、窓口にいてくれるとうれしいだろうという人物を想定してデザインしました」(松井)。実際のキャラクターについては先方からも、当行行員のイメージにピッタリと好評で、すぐに採用が決定したというが「福島の本社にお伺いしたところ、本当にキャラクターにそっくりな方がいらっしゃったのです。あのときは本当に驚きました」(林)。
 このキャラクターデザインにおいて念頭に置いていたのは、利用シーンが変わった場合でもカスタマイズできる拡張性の部分だった。「新たな商品として開発していたこともあり、できる限り最小限のパーツでいろんなパターンのキャラクターに変更できるように意識しました。髪や顔のパーツなど、一からデザインせずともパーツを選択していくことでキャラクターを作ることができるようにしたのです」(松井)。

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潤いのある社会形成に貢献するメディアインテリジェンスの可能性

株式会社東芝 研究開発センター 知識メディアラボラトリー 主任研究員 永江 尚義 株式会社東芝
研究開発センター
知識メディアラボラトリー
主任研究員
永江 尚義

 メディアインテリジェンスによる新たなサービス作りをプロジェクトとして行ってきたが、東邦銀行様の中ではより専門的な業務への応用も期待されている。もちろん、金融機関以外にも、メディアインテリジェンスは様々な場面で応用が検討されている。「今回はインターネット上での展開でしたが、他にも百貨店や交通機関などの案内窓口として使えるような仕組みも開発しています。中国語や英語などの多言語対応技術や、人物認識等の画像技術と組み合わせることで、利用者に合わせたより柔軟な対話が可能になります。また、訪日観光客対応や東京オリンピックでも威力を発揮できます」と林。

 メディアインテリジェンスを含めたICTと社会の関わりについて、「これらの技術は被災者、高齢者、若年者など社会的弱者をもサポートできる仕組みだと考えています。少子高齢化で人口が減っている中、これらの技術を活用することで暮らしやすい社会を維持できるはず。それがICTに関わる我々の使命だと考えています」と林は説明する。同様に小林は「メールをはじめ、コンピューターを使った既存のコミュニケーション手段では、音声をはじめとして五感が充分に活用されていません。東芝グループでは、メディアインテリジェンスを用いて人間らしいコミュニケーションの姿を提案するなど、もう少し潤いのある社会にしていきたいですね」。
 UXデザインを専門にする松井は、「東芝グループが考えるUXは、“うれしさの循環”といって、行動することで自分だけでなく社会に還元できることだと考えています。自分のデータが取られることを好む人は少ないと思いますが、それが気持よく還元できていることが伝わるような仕組みを積極的に作っていきたい。より専門的な領域に対応できるメディアインテリジェンスだからこそ、そういったスキームを作り上げることが重要です」と語る。
 コア技術を研究・開発している永江は、「コア技術は単体でお客様に役立つものではなく、UI(ユーザーインターフェース)も含めてシステムを組み合わせて初めて価値を生みます。我々が担当している技術はまだ決められた範囲に対応していく状況ですが、専門知識を持ってより知的な対話ができるようになるための技術をこれからも開発していきたい」と語った。



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  • *この記事内容は2014年12月8日に取材した内容を元に構成しています。
    記事内における数値、組織・役職名などは取材時のものです。
  • *本記事に掲載の社名および商品名はそれぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。

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