クラウド上のデータ処理によって、3次元気象データを可視化
クラウド上に集まる膨大なセンサーデータを、ユーザの端末上で描画処理できる単位に集約・変換し、ユーザがインタラクティブに操作できる可視化技術開発を行っています。可視化により発見できた意味ある情報を元に、人はシステムを制御し、更にはAIによる予測・制御へと発展していきます。この可視化をWebブラウザ上で行うことで、様々なデータ処理基盤を活用することが出来ます。その一例として、気象レーダデータを可視化する取り組みをご紹介します。
東芝インフラシステムズ(株)は、2013年度にわずか10〜30秒で半径60km、高度14km空間の3次元気象データを観測できるフェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)を開発しました。PAWRで観測されたデータは、クラウド上のデータベースに蓄積され、観測後から30〜40秒の速さでWebブラウザ上に可視化することが我々の可視化技術により実現できました。Webブラウザ上ではWebサーバからストリーミングされる画像データを用いて3次元ボリュームレンダリングを行い、ユーザはインタラクティブに3次元積乱雲を回転させることや、しきい値を設定して注目したい積乱雲のコアを強調表示させることができます(図1)(図1)。
Webブラウザ上で3次元ボリュームレンダリングが可能になった背景の一つに、Khronusが主導するWebGLを用いて一般PC上のGPU資源が使えるようになったことがあります。WebGLベースのライブラリはいくつかありますが、その中でもX3DOMはWeb3Dコンソーシアムが主導するISO/IEC国際標準に準拠し、ボリュームレンダリングをJavaScriptで実装しています。我々はオープンで国際標準であるX3DOMを採用し、気象データ形式やユースケースに適切な可視化のため、地形のポリゴンデータと積乱雲のデータを合わせて表示すること等を可能とするX3D/X3DOM拡張機能を開発しました(図2)(図2)。
また、Webブラウザ上で3次元ボリュームレンダリングをするためには、ネットワーク帯域幅を利用し、膨大な画像データを転送する必要があります。我々はWebサーバから転送される画像データのRGBチャンネルをスタックする方法等で、ダウンロード速度を向上させる機能を開発しました(図3)(図3)。
これらの可視化技術を活用することで、今まで困難であった、ゲリラ豪雨や竜巻など短時間で突発的に発生した積乱雲の10〜30分程度の短いライフサイクルを捉えることや、より精度の高い雨量を予測し関連システムを制御することができます。